Mastering the Delivery of Online Content

オンラインコンテンツ配信を極める - メディアおよびエンターテインメントの観点

Akamai Technologies の Executive Vice President 兼 GM、Adam Karon へのインタビュー

メディア/エンターテインメント業界はテクノロジーによって形成と再形成を繰り返してきました。今日のデジタルテクノロジーによる影響をどう特徴付けますか?

消費者の立場から言えば、音楽業界はテクノロジーの転換を図り、物理的な環境から完全にデジタルな環境に移行しました。同様に今では動画業界が、さらには放送メディアも物理的な環境から成熟したデジタルメディアに移行しようとしています。また、最近では制作や配信業務のデジタル化も進んでいます。以前は通信衛星を使って制作スタジオにデータをダウンリンクしていましたが、今やアップストリームコンテンツはインターネットを介して送信されています。このように、テクノロジーはメディア/エンターテインメントのサプライチェーン全体を確実に変えています。

この業界は、印刷物や、音声、動画形式でコンテンツを消費者に提供することにこだわってきましたが、その目的は、提供範囲を拡大し、より多くの人により多くのコンテンツを視聴してもらうことにありました。テクノロジーはコンテンツを充実させ、範囲を拡大するうえで新しい機会を開いてきましたが、今日ではその提供範囲の定義そのものがインターネットの登場によって書き換えられ、いつでもどこでも、あらゆるデバイスにコンテンツを提供する潜在能力を指すようになりました。かつてコンテンツプロバイダーがこれほど多くの人々に継続的かつ効果的に影響を及ぼすことが可能であった時代はありませんでした。

テクノロジーはまた、YouTube や Facebook、Netflix といった新しい種類のコンテンツプロバイダーやプラットフォームを生み出しました。彼らはこの 10 年で驚異的な成長をとげ、規模を拡大しました。既存のメディア企業にとって、比較的最近登場したこれらの新興企業は、消費者を獲得するうえでは競合他社であり、同時に消費者を獲得するチャネルを提供する存在でもあります。メディア/エンターテインメント分野でこれだけ多くの選択肢が用意され、それらが消費者の指一本で手に入る現在、この市場で勝つためには何が必要なのでしょうか?それは豊富なコンテンツ、魅力的な体験、パーソナル化の推進です。

コンテンツが動画である場合、固有の課題としてどのようなものがありますか?

お客様は、コンテンツがオンライン配信かケーブルボックス配信によるものかを問わず、「テレビと同様の視聴体験」を求めています。最高品質の画像と音声を求め、チャンネルを瞬時に変更でき、あらゆるデバイスでコンテンツが完璧に再生されることを望んでいます。すぐに再生されない、画面に何も表示されない、バッファリングを待たなければならないといった状態は望んでいません。

TV ケーブルボックスの視聴体験をインターネットで再現するのは至難の業です。あらゆるデバイス、つまりセルラー方式のモバイル、Wi-Fi 方式のモバイル、タブレット、ノート PC、インターネット接続テレビといったデバイスに、オンラインでもどうにかして同じレベルのパフォーマンスと信頼性を提供できなければならないということです。車に備え付けのビデオ画面にも同じことが言えます。お客様はいつでも、どこででも、デバイスを問わずコンテンツを入手したいと考えています。このとき、品質は何よりも重要です。コンテンツの収益源がサブスクリプションか広告掲載によるものかは問題ではありません。

メディアの本質を考えたとき、動画配信において継続性は特に重要です。動画は物語を提供し、見る者を想像の世界に連れ出します。もし再生が中断したら、これほどいらだたしいことはありません。配信性能が優れていない限り、動画製品は本来の目的を達することはできません。中断のない配信は、製品の構成要素です。

継続して高パフォーマンスの動画配信を行うために必要な技術力とは、どのようなものでしょうか?

2 つあります。まず、コンテンツを視聴者の至近距離に置くことです。この対策によって、レイテンシーとバッファリングを最小限に抑え、配信速度を上げることができるほか、デバイス上の顧客体験をモニタリングし、その体験を向上させるために必要な調整を行う機会が増えます。Akamai の分散プラットフォームは、サーバーをインターネットの「端」に配置すること、つまり視聴者の近くに置くことを目的としています。

2 番目は、インターネットを操作することです。インターネットには世界中のネットワークが数多く含まれています。コンテンツを A 地点から B 地点に送信するには、ネットワーク同士が通信する必要があります。また、通信上障害や問題がある場合は、問題のネットワークを瞬時に迂回できるようにしておく必要があります。さらに、高度に分散された「端末」はトラフィックのルート変更や配信品質を維持するうえで、より多くのインテリジェンスと選択肢を提供します。

測定の役割について教えてください。

動画のデジタル・サプライ・チェーン全体にとって測定は非常に重要です。コンテンツの制作元であるスタジオでは、サプライチェーン上のすべての「動く場所」を通してモニタリングと測定を必要とし、その作業は秒単位で何度でも実施する必要があります。データを入手し、関連付ける作業は非常に困難ですが、「テレビより優れた」体験を提供するためには必要です。

動画コンテンツの品質を追跡する作業では、お客様のデバイスも重視します。使用されているテクノロジーを使って、動画コンテンツを受信するまでの時間や、中断、再バッファリングによる遅延の有無などを調べることができます。品質確保を目的としたリアルタイム測定の方法は、数多くあります。

さらに、メディア企業は広告掲載やサブスクリプションから収益を得るために、通常のテレビ配信を行った場合のパフォーマンスを測定したいと考えています。ここからが面白いところです。Nielsen のようなサードパーティーによる視聴率の測定では、長い間サンプリングと外挿法に依存してきました。また、多くの視聴者に影響を及ぼすために、広告は一括販売されていました。その一方、オンラインではサンプリングを必要としません。個々のデバイスレベルで、実際に起きていることを把握することができるのです。ここにきて、ようやく視聴者とその体験を直接測定できるようになったのです。視聴者の数、視聴時間、忠誠度、アプリの操作、次の動作、視聴者が人間かボットかなど、さまざまな情報が入手できるようになりました。広告主は、人間が検証したトラフィックデータを希望しています。

この機能は調整に多少の時間が必要です。入手可能なデータの量は膨大で、企業はその量に圧倒されています。そこで一歩下がって視聴者を理解し、広告やサブスクリプションを販売するにはどの測定方法が最も直接役立つのかを検討するのが賢明です。このデータが新しい販売機会や利益、ビジネスモデルさえ作り出すことを忘れないでください。

サイバーセキュリティの分野でメディア/エンターテインメント業界が直面している固有の課題にはどのようなものがあるでしょうか?

e コマースのウェブサイトとも共通していますが、基本的な課題は、お客様の個人情報を安全に保管し、管理することと、企業のサーバーを停止させ、コンテンツを利用不能にする DDoS 攻撃を防ぐことです。

メディア固有の主要課題としては、知的財産がもたらす価値の保護があります。「Game of Thrones」の脚本流出は大きなニュースになりました。コンテンツはコンテンツ制作者から制作会社、制作会社から複数の配信会社、そして最後に関連会社へと運ばれます。その行程にある複数の目的地では、盗聴されたり、不法侵入を受けて盗まれたりすることがないように、コンテンツを安全に送受信し、保管する必要があります。再販を目的としてコンテンツの海賊版が作られたり、コンテンツに無許可でアクセスされたりすることで、企業は大きな収益を失うことになります。

メディア/エンターテインメント企業は、配信業務とサイバーセキュリティとの連携方法に特別な注意を払う必要があります。セキュリティシステムは、コンテンツアクセスに関するビジネスルールの徹底と、ライセンス付与に関する義務の履行を促します。たとえば、ある放送会社が有しているスポーツイベントの放送権が特定の国に限定されている場合は、地理情報に基づいてアクセスを保護することで、権限のないユーザーの視聴を制限する必要があります。また、コンテンツのサブスクリプションをデバイス単位で持っているお客様がいる場合は、その登録情報を安全に管理する必要があります。業界がインターネットへのかかわりを増すにつれて、これらすべてのセキュリティ問題や、この問題がビジネスに与える影響も増大し続けます。

多種多様なコンテンツやデバイスにコンテンツ配信アプリを対応させるには、どのように開発を進めていけばよいでしょうか?

私達は、お客様が指定したデバイス上でできる限り最高の体験を提供したいと考えています。一方で、すべてのデバイスに配信するには非常に複雑な作業を伴うため、手始めに、Android や iOS など、対応すべき主要なプラットフォームを決定します。このような対策をとっても、デバイスレベルの OS では転送スピードやバッファリング機能に限界があり、高品質の動画配信が困難な場合があります。

開発者ができる最も重要なことは、できるだけシンプルで特定の用途にこだわったアプリを開発することです。他の場所で自動的に処理できる作業をこのアプリにさせてはいけません。たとえば、動画ファイルのフォーマットや圧縮はインフラストラクチャで行うべきです。アプリの開発にあたっては、テクノロジーの統合方法ではなく、ユーザー体験に重点を置くべきです。そうは言っても、一般的なコンテンツ配信アプリに、複数のベンダーが開発した API が数多く含まれている場合は、難しい作業になります。

パーソナル化機能やソーシャルメディア体験の機能が増え続けているメディア/エンターテインメントアプリでは、ユーザー体験を重視する開発業務は、それだけで十分複雑です。すでに言及しましたが、アプリがなすべきことの 1 つは、体験の測定と改善を可能にするデータを収集することです。

興味があるのは、コンテンツ配信がどのくらいの規模と早さで、アプリベースからブラウザーベースに変わるのかということです。ブラウザーベースになれば、複数のデバイスに合わせてアプリを開発する必要がなくなります。この戦いは何年も続いており、ウェブサイドでは最近 HTML5 が攻勢をかけています。しかし、そこにはまだ数多くの答えではなく、数多くの疑問が残されています。

社内のテレビ放送担当者とデジタル担当者はどのように連携すべきでしょうか?

5 年前、デジタルはこの業界に登場したばかりでした。投資規模は小さく、話題になるほどの収益はなく、ビジネスというよりも、まだ実験や趣味の域を出ていませんでした。それが今や、デジタルチャンネルは単に普及しているというだけではなく、業界を変えようとしています。米国の主要な放送会社は両サイドを統合し、両方を 1 人の役員の管轄下に置きました。これは、必要不可欠な対応でした。そこには 2 つの理由があります。

第一に、ますます多くのコンテンツが配信チャネルをまたいで配信されています。ソーシャルメディアはテレビ放送のニュース編集室に継続的にニュースを提供し、ニュースはソーシャルメディアやストリーミング、テレビを介して配信されます。あるチャンネル向けに開発されたコンテンツは他のチャンネルにも利用でき、コンテンツはますます複数のチャネルに対応するようになってきています。

第二に、消費者デバイスの急増により、再生機能だけでもさまざまに細分化している中で、コンテンツのサプライチェーンにおけるデジタルテクノロジーの流れは 1 つになりつつあります。このサプライチェーンを設計する際は、コンセプトから消費への流れを描くことをお勧めします。数多くのコンテンツ・サプライ・チェーンでは、一般的なテクニカルアーキテクチャやワークフローを活用することができるので、コストを軽減し、品質を高め、短納期でコンテンツを市場に配信することができます。

最近では、デジタルが未来を作るという会話をよく耳にしますが、多くの人がその意見で一致しています。ですから、テレビ放送の担当者は、エンタープライズのすべての側面でデジタルに対応する必要があります。一方で、テレビ放送は収益の大部分を占めていることから、ビジネスモデルの移行は慎重に行うべきです。またデジタル担当者も、テレビ放送の担当者から運用上の規律や広範囲にわたってコンテンツを確実かつ一貫して配信する方法について学ぶべき点はたくさんあるはずです。

最後に、高まり続けるオンラインチャネルの価値を最大化するために、メディア/エンターテインメント企業の技術担当役員が把握し、実践すべき重要な事柄は何でしょうか?

コンテンツの配信能力を最大化するうえで、重要な点が 3 つあります。

  • 第一に、製品の品質に重点を置きます。単に視聴者にアピールするということではなく、お客様が求める配信品質を実現します。この品質を維持するには、敏捷性を備えたインフラストラクチャとアプリケーションの開発手法を構築する必要があります。テクノロジーでも、市場でも、物事は変化し続けるのですから。
  • 第二に、ユビキタスな製品を作ります。できるだけ多くの場所で利用できるようにすることで、視聴者のエンゲージメントを最大化します。そのためには、拡張可能なコンテンツ配信のインフラストラクチャを構築する必要があります。また、インターネットの使用状態を測定し、インフラストラクチャを適応させるための能力も必要です。
  • 最後に、サブスクリプションによる収入か広告収入かを問わず、お客様の利用をできるだけ阻害しない収益化の手段を考えます。企業は入り口の障壁をできるだけ低くして、消費者が製品を視聴できるようにしたいと考えています。それが最も集合的な価値を生み出すからです。

この 3 つを実現すれば、エンジニアリングと技術担当の人材を、制作担当の人材と同様に、魅力的な製品の開発に投じることができます。ネットワークや動画の運用といった業務ではなく、利益をもたらす消費者体験を提供することに注力できるようになります。

業界にとっては刺激的な時代です。全員がさまざまなモデルを試し、消費者に自社製品の購入を促そうとしています。Netflix と Amazon はかなり異なったモデルを採用して成功しているようです。既存の放送業界およびコンテンツプレーヤーは異なる方法に投資し、試していますが結局のところ、すべての企業の成功はデジタルコンテンツの円滑な配信にかかっているのです。

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