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日立建機株式会社

日立建機がグローバルに展開する建機サポートシステム「Global e-Service」の接続回線を高速化し、IoT化を加速

パフォーマンスは、最大4倍にもなりました。2倍になれば御の字だと思っていましたので、信じられないほどの効果でした。

経営管理統括本部 IT推進本部 業務システム統括センタ長 松田 富士夫氏 , 日立建機

概要

日立建機株式会社は、1970年設立の総合建設機械メーカーだ。ミニショベル、油圧ショベル、ホイールローダ、ダンプトラックや超大型油圧ショベルなどを製造し、日本国内だけでなく、アジア、ヨーロッパ、オセアニア、アフリカと世界中250を超える代理店で販売している。

建設機械のM2M化によりサポート業務の効率化を目指す

販売した建設機械のサポートも、日立建機の重要な事業のひとつ。建設機械はライフサイクルが長く、中古の販売も盛んだ。そのため、新品だけでなく建設機械のライフサイクル全期間がサポートの対象となる。そこで日立建機では、サポートの効率化を目指し、2005年に『Global e-Service』を開始した。サーバーにはメンテナンスマニュアル等の製品情報が保存され、日立建機をはじめ世界各国の販売代理店や建設機械のユーザーが、自分たちの言語で簡単に製品情報を参照できるようになっている。さらに、今後を見据えてより一層の効率化を図るため建設機械に通信装置を搭載し、携帯通信や衛星通信を使って機械情報を遠隔地から取得できるようにしようと考えた。遠隔地から機械の状態を監視し、全建設機械の状態を一元管理しようというわけである。いわゆるM2M、最近のトレンドワードでいえばIoTだ。

サービス開始から10年が経過した2015年3月現在、M2M機は140カ国・地域で累計20万台に達した。当初、「建設機械のM2M化による効果は、投資に見合うものにならないだろう」と悲観的な声も多かったというが、目に見える効果が出始めたのである。サービス開始から現在に至る経緯を、Global e-Serviceの企画時から携わっている、経営管理統括本部 IT推進本部 業務システム統括センタ長の松田富士夫氏に伺った。

Global e-Servceはアクセススピードが遅い 立ち上げた途端、不満続出

Global e-Serviceのスタートは、決して順風満帆ではなかった。開始早々パンク状態になり、システム的に当時最先端の機器を使っていたにもかかわらず、ヨーロッパからのアクセススピードが遅いと不満が続出したのだ。その原因はサーバーにあるのではないかと考えた日立建機は、サーバーを国内にあるデータセンターに移行した。インターネット回線が2系統、電源も2系統のかなり高級なホスティングだった。しかし、アクセス速度は一向に改善されない。当初はその原因が機器にあると考えていたが、調査の結果、インターネットに問題がありそうなことがわかってきた。特にヨーロッパの改善が大きな課題だった。

サイトの一元管理をあきらめて、地域ごとにサーバーを設置すれば、アクセスの不満を解消できる。しかし、「地域ごとに分けるとコストがかかりますし、保守の問題も起こります。そういった問題を解決するための一元化でもあるわけですし、サーバーを地域ごとに分けてしまってはGlobal e-Serviceを実現できません」と松田氏は言う。サイトの一元化には、情報に対するガバナンスを強化し、セキュリティを確保することは当時、日立グループにとっての大命題でもあった。

アクセスを加速する手段にはアプリケーションもある。しかし、ネットワークそのものに手を付けてパフォーマンスを改善するCDNソリューションを提供していたのは、当時はアカマイだけだった。エッジサーバーというアイデアも斬新だった。

松田氏は言う。「どこに接続するかをアカマイに伝えると、トライアルという形で非常に簡単に導入効果を試すことができました。世界中でスピード測定をやったところ、満足できる結果が出てきました。2009年に検討を始めて、2010年にアカマイを導入しました」。

アカマイの導入効果は上々だった。「ヨーロッパでのパフォーマンスは、最大4倍にもなりました。2倍になれば御の字だと思っていましたので、最大4倍ものパフォーマンスアップは信じられないほどの効果でした。」(松田氏)

遅いという不満が解消された結果、Global e-Serviceへのアクセスは増加の一途をたどった。一般の Webサイト のように誰でもアクセスできるシステムではないにもかかわらず、毎月アクセス数が 10~15パーセント程度増加しているという。大きな効果が得られた日立建機ではその後、中国市場対策ソリューションであるアカマイのChina CDNを導入。中国での導入効果も絶大で、1.5倍から最高8倍ものパフォーマンスが得られるようになった。

当初は周囲に反対されていた建設機械のM2M化

Global e-Serviceのメリットは最初から理解されていたものの、実は建設機械に通信装置を付けることに対しては反対意見のほうが多かったという。

「余計なことはやりたくない、それによる効果は投資に見合うものにならないだろうという意見のほうが多かった。建設機械のライフサイクルは長いですから、M2Mが市場のマジョリティを取るまでには何年

もかかります。実現したときのバラ色の世界を想像することはできますが、それまでの道のりを考えると誰も積極的になれない。何が起こるか分からないですから」(松田氏)

松田氏は、M2M機用に非M2M機用とは別のシステムではなく、どちらでも使える統合的なシステムを作った。そして、建設機械のデータを集めたのである。そのシステム上で、M2M機だけでなく非M2M機に関する情報も一元的に管理できるため、明日からすぐにM2M機でも非M2M機でも使えることを示したのである。

データの全てを日立建機がつくったわけではない。代理店や販売会社それぞれが、自分たちが売った建設機械のデータをつくったのだ。その作業がある程度進むにつれ、乗り遅れまいという気持ちからデータづくりが加速し始めたのである。それまで建設機械の情報を見ても、販売会社名や代理店名はわかっても顧客名はわからなかった。顧客名は、代理店や販売店さえわかっていればよかったからだ。ところが、Global e-Serviceを利用するようになると、代理店・販売店にとっては顧客名が入っていたほうが便利になる。そこで、自ら顧客名をデータとして追加するようになったのである。結果的にGlobal e-Serviceの利用価値が上がり、日立建機にとっては建設機械の状態をより正確に管理できるようになった。

次に考えたのは、M2M機のパフォーマンスの改善だった。建設機械の通信パフォーマンスが改善すれば、Global e-Service全体のパフォーマンスが向上する。そこで日立建機では、モバイル通信のパフォーマンス向上効果も期待できるアカマイのIonに更新した。

こうしてGlobal e-Serviceは、累計20万台のM2M機が登録され、世界140カ国・地域を網羅するサービスへと成長したのである。

日立建機のサービスから日立グループ全体で利用するプラットフォームへ

当初は反対意見が多かったGlobal e-Serviceだが、今では「やめないでほしい」という意見が圧倒的だという。M2MやIoTの未来が見えてきたからと思いきや、理由は別のところにあった。

「未来が見えるというより、Global e-Serviceをやめてしまうと現在が見えなくなるのです。もはや見えていることが前提のビジネスになっているのです」(松田氏)

そして、2013年には教育用コンテンツもアカマイ化した。Global e-Serviceには今、教育用システムが入り、eラーニングのコンテンツもひとつのメニューになっている。教育効果を高めるには動画も必要だろう。動画を扱うとなれば、ネットワークにはより高いパフォーマンスが求められる。そのためにDynamic Site Acceleratorを導入したのである。

アカマイのソリューション導入は、想定外の効果もあった。DDoS対策だ。

「今でも続いていますが、一時期、頻繁にDDoS攻撃を受けたことがありました。しかし、われわれは全く関知せずで、防御するために何かすることなく、守ることができました。アカマイのプラットフォームがDDoS対策としても機能するからです。これもアカマイのプラットフォームのおかげです」(松田氏)

建設機械のサポートをより効率的にする目的で始まったGlobal e-Serviceだが、今では蓄えられた情報を製品開発にも利用され、社内で使わない部署はほぼないほどだという。Global e-Serviceは、いまや製品やサービスの情報を管理するためのプラットフォームに成長しているのだ。さらに、日立製作所では、SaaS型機器ライフサイクル支援サービス「Global e-Service on TWX-21」のブランド名で販売も始めている。

「ある人が、CIOはChief Integrated Officerだと言っています。われわれは今、まさにそのインテグレーターなんです」と松田氏は言う。あるいは、Global e-Serviceのコンサルタントといってもいいかもしれない。

その松田氏が直近の課題として考えているのがウェアラブルへの対応だ。「スマートフォンやタブレットはもうGlobal e-Serviceに載っていますので、次はウェアラブルです。あとは、アプリケーションをどうやってつくればいいかです」と松田氏は語った。