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株式会社メルカリ

トラフィック増加に伴うコスト増大をObject Deliveryで解消 併せて画像配信のパフォーマンスも改善

コストをなんとかしなければいけないと考えた時点と比べて、月額で100万円以上は抑えらている

プリンシパルエンジニア 久保 達彦氏 , メルカリ

概要

従来、インターネットを利用したCtoCコマース(個人間売買)の手段はオークションだけだった。そこに風穴を開け、現在多くのサービスが激しい競争を繰り広げているのがフリマアプリである。フリマアプリは、フリーマーケットのように個人が気軽に商品を売買できるサービスを提供するスマートフォンのアプリ。3~4年前に登場したばかりにもかかわらず、すでに数多くのアプリがリリースされている。その中で、トップシェアを誇り、大きな注目を集めているのが株式会社メルカリのフリマアプリ『メルカリ』だ。

Akamai を選んだ理由

リリースから2年半弱 国内2,000万ダウンロードを突破したメルカリ

メルカリは2013年2月に設立され(設立時の商号は株式会社コウゾウ、2013年11月に株式会社メルカリに商号変更)、同年7月にサービスを開始した。翌2014年10月には手数料を有料化。それまでは出品者、購入者ともに手数料無料だったが、売買が成立したときのみ出品者から販売価格の10パーセントを手数料として徴収するようになった。

2014年9月にアメリカでもサービスを開始し、リリースから2年4カ月後の2015年11月には日本国内のメルカリアプリのダウンロード数が2,000万件を突破した。さらに、翌12月には黒字化も達成している。急激な成長を支えている要因のひとつは、「フリマアプリ『メルカリ』はスマホでかんたん・あんぜんです。」「オークションよりかんたん!」「スマホカメラから3分で気軽に出品」といったアプリの説明にも出てくるように、サービスやアプリがスマートフォン対応で、売る側にとっても買う側にとっても敷居が低く、安全に利用できることにある。メルカリのサービスやアプリは、こうした特徴がEコマース経験のあるユーザーだけでなく、Eコマース初心者にも納得してもらえるように設計・構成されている。

メルカリの社名は、「market」の語源となったラテン語の「mercari」(「商いをする」の意)に由来する。メルカリは、文字どおりネット上の新しい商いの形になりつつある。

急増したトラフィックに対応するためCDNサービスをアカマイに乗り換え

インターネットでサービスを提供する企業にとって、大命題はいかにユーザーを増やすかにある。だが、ユーザーが増えればアクセスが増え、トラフィックが増えればそれに応じてサーバーやネットワークを増強しなければならない。システムを強化すれば当然、費用がかさむ。無尽蔵に増やし続けるわけにはいかないため、何らかの対応が求められるのは言うまでもない。

メルカリはトラフィックの増加を見込んで、サービス開始当初からあるサービスプロバイダーのCDNを活用していた。しかし、メルカリアプリは、2014年9月に500万ダウンロード、同年12月に700万ダウンロード、2015年2月には1,000万ダウンロードを達成。トラフィックは当初の見込みを大幅に超えて増加し、CDNにかかるコストも想定以上に膨らんだ。前年10月に手数料を有料化して収益の目処は立っていたが、CDNだけに多大な費用を割くわけにはいかない。こうして当時、使っていたサービスプロバイダーやアカマイを含めたCDN提供業者数社と交渉することになった。

メルカリでコンテンツ配信システムの構築・サポートを担当するプリンシパルエンジニアの久保達彦氏は、「ユーザーが増えるに従って料金がかさんできたのと、画像の配信をもっとよくしたいというのがその当時の課題でした」と語る。ユーザーが出品した商品が売れるかどうかは、商品写真の画質や表示速度によっても左右される。新しいCDNサービスを導入する一番の目的は経費削減だったが、商品写真はできる限り高画質・短時間で表示されたほうがいい。

検討の結果、こうした課題を最も解決できそうだったのがアカマイのソリューションだった。採用が決まったのは、2015年3月のことである。Object Deliveryを導入し、同年4月から稼動し始めた。

アプリケーションの設定ファイルを2~3行変更するだけだったから、Object Deliveryへは特に苦労することもなく移行できた。久保氏はユーザーとしてObject Deliveryを使ったことがなかったため、アカマイで導入・運用トレーニングを受けた。

「トレーニングで、エンドポイントの追加や設定の更新、デプロイの反映の仕方など、アカマイ特有の操作方法も含めて全て教えてもらいました。アカマイのサービスを使うのは初めてでしたが、トレーニングのおかげで今は問題なく運用できています」(久保氏)

短期間でコスト削減が実現し、パフォーマンスも向上

CDNサービスの移行はスムーズに完了できたが、肝心の導入目的は達成できたのだろうか。

久保氏は「コストをなんとかしなければいけないと考えた時点と比べて、月額で100万円以上は抑えらている」と語る。パフォーマンスも上がった。メルカリでは現在、日本とアメリカでサービスを展開している。日本のネットワークは高速だが、アメリカは日本に比べると速度が遅くレイテンシーが大きい。久保氏の言葉を借りれば、Object Delivery導入後、そのレイテンシーが劇的に改善したという。

検証のためトライアルした際には、米国サイトに北米からアクセスした時メルカリのオリジンサーバーで数百ミリ秒だった遅延が、アカマイ経由だと数十ミリ秒へと大幅に短縮された。なお、それまで使っていたCDNサービスでは表示時間がオリジンサーバーより短縮されるものの、アカマイほどではなかった。もともと速かった日本でも、米国ほどでは無いが改善が見られた。もっともトラフィックは、アメリカよりも日本のほうが圧倒的に多い。Object Deliveryは、その大量のトラフィックを効率よく処理するために貢献しているといえそうだ。

導入したObject Deliveryは、画像ファイルに加えて、CSSとJavaScriptもキャッシュしている。ネットワークが遅いアメリカでは、このCSSとJavaScriptのキャッシュが大きな効果を発揮している。メルカリのプリンシパルエンジニア、長野雅広氏は、その理由をこう説明してくれた。

「画面は、CSSやJavaScriptを読み込み終わらないと表示されません。日本ではそれほど大きなメリットはありませんが、ロケーションによるネットワークパフォーマンスの差が大きいアメリカではそれがレイテンシーの解消につながって、パフォーマンスが上がりました」

目指すは日米で異なるユーザーニーズを両立できるシステムの構築

今はまだAkamaiの一部の機能しか使っていない。導入当時はそれで十分だったがその後、社内のニーズが変化した。現在、SSL証明書はアカマイのドメインを使っているが、メルカリのドメインで証明書を使いたいという要望があるという。例えば、Facebookなど他社サービスに画像を埋め込む場合、独自ドメインの証明書でないと画像が表示されないようになってきた。これに対応するため、独自のSSL証明書が必要だというのだ。

HTMLファイルをキャッシュしたいという要望も出てきた。Androidアプリはまだしも、iOSアプリの場合、リリースするにはアップルの認証が必要になり、これには時間がかかる。メルカリのマーケティング部門では少なくとも月に1回はプロモーションを行う。プロモーション用コンテンツをネイティブで作ると、認証に時間のかかるiOSアプリの場合、タイミングよくプロモーションを実施できないため、HTMLで記述して配信している。そのプロモーション用コンテンツのパフォーマンスを高めるために、HTMLファイルをキャッシュしようというのだ。

スマートフォンは、新機種が発表されるたびにディスプレイの解像度が上がる。個々の機種に合わせて、解像度を変換するのは不可能に近い。そこで「将来的には、機種の解像度に合わせて高画質な画像を自動的に変換して配信するようなことをやりたいと思います」と久保氏は言う。

ネットワーク環境の違いのためか、日本のユーザーからは「画像をもっときれいにしてほしい」と言われ、アメリカのユーザーからは「画像がもっと速く表示してほしい」と言われるそうだ。メルカリでは今、日米同じシステムを使っているため、そこを細かく調整するのは難しい。そこで長野氏は、「回線速度や端末速度によって細かく調整できるようなものにシステムを変えていければ」と考えているという。

メルカリは、これからもCtoCの可能性、楽しさを見せ続けてくれそうだ。