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東京急行電鉄株式会社

緊急時にも情報を安定提供できる Webサイト運営をアカマイ・ソリューションが支援

鉄道会社のなかには3.11のときにサーバーがダウンしたところもありましたが、弊社のサイトはダウンすることなく安定して稼働することができました。

社長室 広報部 統括副部長兼広報課長 栗原 浩史氏 , 東急電鉄

会社概要冊子からの置き換えが公式Webサイトの出発点

東急グループの中核企業として、東京都南西部から神奈川県東部にかけての地域で東横線や田園都市線など8路線を運行する鉄道事業のほか、都市開発事業や生活サービス事業、ホテル・リゾート事業などを進める東京急行電鉄株式会社(以下、東急電鉄と略)。「電鉄」の文字から思い浮かべる鉄道事業のみならず、様々な事業を展開する同社の特長をひと言で表現するなら、沿線に住む人々の生活を多角的に支援するサービスの提供企業ということになるだろう。

東急電鉄がWebサイトを開設したのは、1998年から1999年にかけてのことだった。同社は毎年、会社概要をまとめた冊子を制作している。最初の公式Webサイトは、言わばその冊子のインターネット版だ。

「もともとの当初のサイトは事業者視点といいますか、われわれが編集して、事業部ごとに括ってまとめたものでした」と、同社Webサイトを統括する栗原浩史統括副部長は言う。企業の広報資料である印刷物の会社概要を、Webに置き換える。これは東急電鉄に限ったことではなく、多くの企業に共通するWebサイトに対する当時の考え方だ。

そのような事業者視点ではじまったWebサイトだが、利用者からの掲載要望がもっとも高かったのは電車の運行情報だった。

「特に関心が高いのは台風が接近しているときなどです。運行情報をホームページでお伝えすることは顧客満足の視点でも極めて重要であり、鉄道会社としての重要な責務であると考え、2002年に改修しました」(栗原氏)

さらに電車が遅れたとき、それまでは駅で発行されていた遅延証明書をWebサイトで取得できるようにした。

「以前は電車の遅延があった際には各駅ごとに紙の遅延証明書を大量に作成し、お客さまが下車された駅で手渡していました。このやり方では駅も大変混雑することになるため、お客さまにご不便を掛けてしまいます。そこで東急線をご利用いただいたお客さまにご自宅や会社など、どこからでも遅延証明書を入手していただけるようにWebサイトで発行し、それが正規の証明書になるようにしようと取り組みました」(栗原氏)

「遅延証明書をWebサイトで発行できるように改修したのは2007年でした」と広報課の黒田武氏は語る。

こうして利用者の声を取り入れながら、東急電鉄Webサイトは事業者視点から利用者視点のサイトへと変貌を遂げていく。

Webサイトの構成を事業者視点から利用者視点へと転換

鉄道会社のWebサイトに鉄道の運行情報が掲載され、さらに遅延証明書まで取得できるとなれば当然、鉄道利用者のアクセスが増える。特に人身事故が起きたり、天候が大きく変動したりしたときには、電車は平常どおり動いているのだろうか、と確認するためのアクセスがさらに増える。多くの利用者が運行状況を気にするのは、平常時ではなくこうした「異常事態」が起きたときだから当然、アクセスが集中しサイトは混雑することになる。すると「表示に時間がかかる」「画面がフリーズした」「見たい情報にたどりつけない」「遅延証明書が取れない」といった不満の声が寄せられるようになってきた。

とはいえ、「事故によりアクセスが集中しているため、サイトが混雑しています」と言い訳はできない。利用者にとっては、平常時も異常時も同じように必要な情報にスムーズにアクセスできて当たり前。なんとしてでも異常時における利用者の不具合を解消する対策を打たなければならない。それが、アカマイのソリューションを導入するきっかけだった。

「今から考えるとおかしな話ですが、膨大にサーバー数を増やすことでアクセス集中による障害を解消しようとも考えました」(栗原氏)

東急線沿線には現在17市区あり、人口は約500万人。住民が一斉にアクセスしても耐えられるようにするには、いったいどれだけのサーバーが必要か。それを試算した結果、ひと月1億円を超える維持費がかかることがわかった。とてもではないが、それだけの費用はかけられない。仮にかけられたとしても、それでは平常時の無駄が大きすぎる。そこで検討し始めたのが、アクセス集中よる障害を解消できるというCDN (コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)サービスの導入だ。2008年のことだった。

当時、CDNサービスを提供していた事業者は複数社あった。そのなかからアカマイのサービスが最良と判断した理由は単純明快だ。他の事業者は、異常事態が起きたときを想定して、ディスク容量をどこまで増やすか等をあらかじめ決めなければならなかった。ところがアカマイでは、アクセスが増えれば増えただけ、その時々の状況に応じて柔軟に容量を増やすことができる。

「どれだけの容量が必要になるか事前に予測できないからこそ、CDNのような仕組みを導入しようと考えていたわけです。アカマイのサービスは、膨らめば膨らんだだけいかようにでも対応が可能という話でした。サービスを利用する側が異常事態の度に何がしかの判断をする必要のない仕組み」(栗原氏) だったことが、アカマイ・ソリューションの導入を決定した理由だった。

アカマイの導入で東日本大震災にも耐えた東急電鉄Webサイト

導入を決めたもう一つの理由はアカマイの実績だ。

「例えば、オバマ大統領の就任演説。このときにアカマイのシステムが使われたと聞きました。あれほど注目度が高く、全米のみならず世界各国で注目される演説だったにもかかわらず、サーバーがダウンすることなく安定して稼働した。これは信頼できるシステムだと評価しました」(栗原氏)

こうしてアカマイのCDNサービスの導入が決まり、2009年から稼働が始まった。

「導入したのはDynamic Site Deliveryです。これをtokyu.co.jp全体で利用していますが、もっとも効果が顕著なのは弊社Webサイトのキラーコンテンツともいえる『運行情報』の表示に関してです」(黒田氏)

2009年に導入した後、2011年3月に起きた東日本大震災。首都圏の交通機関は大混乱に陥ったが、このときのアクセス集中にも、東急電鉄のサイトに問題は起きなかった。

「鉄道会社のなかには3.11のときにサーバーがダウンしたところもありましたが、弊社のサイトはダウンすることなく安定して稼働することができました。試算上、相当なレベルまで耐えられるような固定費での契約にしておいたつもりですが、一時的に遥かにそれを上回るほど膨大なアクセスがあり、正直びっくりしました」と栗原氏は言い、それ以来アカマイに対する信頼はさらに高くなったという。

異常事態が生じた際にも平常時と同じように、利用者が安定して運行情報を見られる環境を整えたい。その思いが、東日本大震災という未曾有の災害にも耐えられるシステムの構築に繋がっているのだろう。

2009年のアカマイDynamic Site Delivery 導入以降、新たなサービスの追加は行っていないが、3.11を経てさらなる大災害にも耐えられるよう、よりアクセス障害に強い内容に契約を更

新したという。その効果は、東日本大震災から半年後に台風12号が首都圏を襲った際に早くも表れた。このときのアクセス数は、東急電鉄がWebサイトを公開して以来、最高だった。

「3.11のときはおそらくホームページを見ようというより、皆さん、テレビに釘付けだったのでしょう。それが台風12号のときは運行情報を確認しようという方が多かったようで、これまで

で最高のアクセスを記録しました」(栗原氏)が、サーバーはダウンしなかった。契約の増強が功を奏したのは、まさに先見の明といえるだろう。

さらに利用者視点に立ったコンテンツを強化

先にも触れたように、運行情報は鉄道会社である東急電鉄Webサイトのキラーコンテンツだ。しかし、「それで納まるようなWebサイトになってはいけない」(栗原氏)と、2014年4月にリニューアルした。

新しいWebサイトには、「○○駅では今、こんなイベントが開催されています」「××駅周辺には東急グループのこんな施設があります」等々、「買う」「泊まる」「学ぶ」といった生活の様々なシーンに応じた生活者目線の情報がふんだんに盛り込まれている。当初、事業者視点でつくられたWebサイトは、徐々に利用者視点に立ち位置を変え、4月のリニューアルでさらにその方向性を確固たるものにした。

「当社は鉄道会社ではありますが、元々は都市開発の会社でした。田園調布を開発した田園都市株式会社が街を開発する中で都心までの輸送手段として鉄道が必要になり、目蒲線を開業して、最終的に当社の前身となる目黒蒲田電鉄株式会社として統合されました。街づくりや鉄道事業のようにインフラビジネスについては幅広く認知いただいていますが、これ以外にも子会社も含めて沿線生活者の暮らしを豊かにするためのさまざまな商品サービスを提供しています。こういった情報を生活者の視点に合わせた形で分かりやすく発信していかなくてはいけない、それが今回のWebサイトリニューアルのテーマでした」(栗原氏)

この狙いは見事に当たり、それまで600万だった平均月間ページビューは、リニューアル以降、700万ページビューまで伸びた。また、今回のリニューアルでは、CMS(コンテンツ・マネージメント・システム)も導入した。それまで情報の更新はHTMLの知識がある者に限られていたが、今は担当者が必要に応じていつでもコンテンツを更新できる。これもページビューの伸びに貢献しているにちがいない。

東急電鉄では、ハウスクリーニングやお手伝いサービス、靴やバッグ、家具の修理など家庭でのちょっとした困りごとをサポートする「東急ベル」というサービスを展開している。東急電鉄Webサイトにアクセスする利用者の行動パターンが分析できれば、それをマーケティング的に活用し、東急ベルのサービスに結びつけることができるのではないか。リニューアルからまだ数ヶ月しかたっていない今、新しい具体的な計画はこれからではあるが、東急電鉄はその可能性を模索し始めている。