ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)とは

SDLC は、ソフトウェア開発ライフサイクル(Software Development Lifecycle)の略です。SDLC 法と呼ばれることが多く、ソフトウェア開発者はこの体系的なアプローチに従って、ソフトウェアシステムの計画、設計、開発、テスト、保守を行います。各フェーズには、高品質のソフトウェア製品の開発と実装を成功させるために役立つ、独自の一連のアクティビティと成果物があります。

ライフサイクルという言葉は、テクノロジーに当てはめて比喩として使用されます。人間や動物のように、ハードウェアやソフトウェアは世界に生まれ、役割を果たし、それに代わる新たな世代が登場するまで存在し続け、やがて役目を終えます。アプリケーションのライフサイクルは、ソフトウェア開発ライフサイクル(SDLC)と呼ばれます。SDLC は、問題の調査や計画からコーディング、展開、更新、廃止まで、複数の段階で構成されるプロジェクト管理フレームワークです。この記事では、SDLC の仕組み、構成要素、実行方法について説明します。

SDLC とソフトウェア製品ライフサイクルは関連していますが、異なるプロセスであり、その違いを理解することには時間を割く価値があります。ソフトウェア製品は市場に投入され、うまくいけばその後のバージョンにアップデートされながら「寿命」をまっとうし、最終的に市場を去ります。一方、SDLC はソフトウェアの開発と展開のプロセスを指します。

ソフトウェア開発ライフサイクルの仕組み

SDLC は、ソフトウェアを作成し、展開や廃止まで導くことを目的としています。しかし、より高いレベルでは、ソフトウェアアプリケーションによってビジネス上の問題やテクノロジー上の問題を解決するという目的があります。そして理想的には、このプロセスが、可能な限り効率的かつ質の高い方法でそのような問題を解決するでしょう。

SDLC プロセスには、組織全体の関係者が関与します。もちろん、ソフトウェア開発者だけでなく、ビジネスアナリスト、プロジェクトマネージャー、事業部門のマネージャー、テストチームや品質保証(QA)チーム、IT 運用担当者も含まれます。通常、セキュリティチームは、ネットワークマネージャーやストレージマネージャーと同様に、SDLC に何らかの影響力を持っています。

SDLC の段階

SDLC には通常、7 つの主要な段階があります。組織によっては、その数は増減する可能性があります。例えば、計画段階と要件段階を統合する場合があります。

SDLC は、ビジネス上の問題とテクノロジー上の問題を特定することから始まります。金融サービス企業は、より直感的な株式取引ソフトウェアを求めているかもしれません。物流会社は、ソフトウェアを使用して倉庫を効率化する必要があるかもしれません。解決すべき問題があることを認識することが、7 つのフェーズからなる SDLC を開始するきっかけとなります。

  1. 計画:計画フェーズで重要なのは、ソフトウェア要件仕様書(SRS)の作成です。これには、ソフトウェアの機能、必要なリソース、潜在的なリスク、プロジェクトのタイムラインの概要が記載されます。関係者が集まり、プロジェクトの範囲についての話し合い、プロジェクト計画の作成、予算計画の策定などを行います。プロジェクトに新しい開発ツールやソフトウェアライセンスが必要である場合、購買部門が関与することがあります。このフェーズでは、プロジェクトが予算内に収まり、予定されたタイムフレームに合致するようにするために、正確なコスト見積もりが極めて重要です。
  2. 要件収集:事業部門の関係者は、ビジネスアナリストやテクノロジー専門家と話し合い、ソフトウェアアプリケーションの要件を見極めます。プロジェクトの目的が既存のシステムを更新することである場合、システムの欠陥とその修正方法が話し合いの焦点となります。ソフトウェアがユーザーのニーズを満たし、高い満足度を達成できるようにするためには、顧客の期待を理解し、それに対応することが不可欠です。
  3. 設計と試作:この段階では、ソフトウェア開発者が要件をソフトウェア設計計画に落とし込みます。この計画ではアプリケーションアーキテクチャを指定し、使用するテクノロジー(MySQL を使用した Linux 上の Java など)を特定します。また、この段階には技術設計だけでなく API 計画を含める必要があります。例えば、なぜ API が構築されているのか、それはビジネスにどのような影響を与えるかを理解することが重要です。
  4. 開発:この段階では、実際のコーディングが行われます。現代のソフトウェアにおいて、このプロセスには他のシステムのデータや機能を提供するアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)とコードを連携させることも含まれます。開発とは、記述済みのオープン・ソース・ソフトウェア(OSS)のコードコンポーネントを埋め込むことを意味する場合もあります。このフェーズの完了時点で、ソフトウェアの機能部分をテストできるようになっている必要があります。アジャイル型または DevOps のシナリオでは、その部分が既存のアプリケーションに追加される場合があります。
  5. テスト:テストは SDLC の重要な段階であり、コード内の機能的な問題やセキュリティ上の問題を特定することを目的とします。目標は、ソフトウェアが展開前にすべてのユーザー要件とビジネス要件を満たすようにすることです。テスト方法には、ユニットテスト、API テスト、統合テスト、セキュリティテスト、パフォーマンステストなどがあります。問題やバグが発見されると、修正のために開発者に戻されます。 
  6. 展開:ソフトウェアの準備が整い、テストとデバッグが完了すると、本番サーバーに展開されます。このプロセスには多くの場合、ソフトウェアのパッケージ化と、サーバーソフトウェアやデータベースなどの設定が含まれます。多くの場合、特に DevOps や継続的インテグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)ワークフローでは、このプロセスは自動化されています。 
  7. 運用とメンテナンス:本番環境にソフトウェアを展開したら、パフォーマンスの問題やセキュリティの脆弱性がないか監視する必要があります。需要が多すぎる場合、ソフトウェアを実行しているサーバーが「ホット」になり、ソフトウェアの応答が遅くなることがあります。IT 運用チームはこれを察知し、追加のインスタンスをスピンアップして問題を修正する必要があります。さらに、コードやサポートソフトウェア(サーバーのオペレーティングシステムやデータベースなど)にセキュリティの脆弱性が見つかると、IT 運用チームはソフトウェアにパッチを適用する必要があります。これは継続的なプロセスであり、常に監視を行い、発生した問題に迅速に対応する必要があります。 

廃止を SDLC の第 8 段階と見なすこともあります。ソフトウェアは永遠に存続するものではないと言えます。時が経つにつれて、関係者は修正する必要のある問題を見つけることになり、通常は新しいバージョンのコードで修正します。もしくは、完全に新しい代替アプリケーションを作成するという決断を下します。IT 運用チームは、古いバージョンをアンインストールして新しいバージョンを展開する必要があります。これこそ、真のライフサイクルです。終わりはありません。

SDLC のモデル

SDLC はいくつかの主要なソフトウェア開発モデルに適応でき、そのそれぞれが異なるソフトウェア開発手法に沿っています。「ウォーターフォール型」の手法は最も古く、最もシンプルです。このアプローチでは、SDLC フローの各段階が順番に行われ、前の段階が完了した後に次の段階が開始されます。計画が始まって完了すると、要件収集が始まり、それが完了すると、開発が始まります。

一方、「アジャイル型」のソフトウェア開発手法に基づく SDLC は、一連の継続的なリリースサイクルで構成されます。各サイクルで、それまでのリリースに小さな変更を段階的に加えていきます。反復的かつ循環的であり、SDLC をループさせて繰り返します。このアプローチにより、関係者はプロジェクト内の問題を特定し、より深刻な問題に発展する前に解決できるようになります。

「リーン型」のソフトウェア開発手法は、作業プロセスの効率的なフローと継続的な改善を促進するリーン生産の原理を模倣した SDLC を生み出します。「反復型」の SDLC は、開発サイクルごとに不完全なバージョンのアプリを展開しながら、フィードバックと複数の後続バージョンを通じて迅速な開発と継続的な改善を行うことに重点を置きます。最初の反復では、ごく一部の要件に適合します。反復するたびに要件が追加されていきます。最後の反復までに、アプリはすべての要件を具体化したものになります。

「スパイラル型」の SDLC は、プロジェクト特有のリスクパターンに基づく開発プロセスを提供します。関係者はプロジェクトを評価し、他のプロセスモデルのどの要素を組み込む必要があるかを判断します。「V 字型」(妥当性確認型とも呼ばれる)は、各開発フェーズを対応するテストフェーズと密接にリンクさせ、エラーを早期に特定します。各検証フェーズが妥当性確認フェーズにリンクしており、ワークフローの概略が V 字で表現されます。対照的に、「ビッグバン型」は最小限の計画で迅速な開発を行うことに重点を置いたハイリスクのアプローチであり、小規模なプロジェクトに適しています。

SDLC の進化は止まりません。新たなソフトウェア開発形態が出現すると、SDLC に影響を与えることになります。しかし、根本的な目標は決して変わりません。SDLC は常に、信頼性の高い、高速かつ効率的なプロセスで、最高品質のソフトウェアを作成することを目指します。

SDLC におけるアジャイル型の反復的な開発

アジャイル型は現代のソフトウェア開発プロセスの基盤となっており、柔軟性、コラボレーション、反復的な進行を重視します。ウォーターフォール型では、異なるフェーズを直線的に進める必要があります。それとは異なり、アジャイル型では、開発チームはプロジェクトをより小規模で管理しやすい反復に分割し、ライフサイクル全体で段階的な改善を施すことができます。

アジャイル開発は、フィードバックや調整を頻繁に行うことで、開発者、テスター、関係者のコラボレーションを促進します。チームは短期間で作業し、要件を調整し、各段階でコードを作成します。テストフェーズが反復サイクルに直接組み込まれ、継続的に実施されるため、脆弱性の早期検知とアプリケーションセキュリティの強化が可能になります。

それに対し、ウォーターフォール型では逐次的なフローに従うため、最初の設計フェーズ後の変更にはコストと時間がかかります。ただし、要件が明確に定義されているプロジェクトでは、ウォーターフォール型のアプローチのメリットを得られる場合があります。この 2 つを比較すると、アジャイル型には動的な環境における適応性があり、ウォーターフォール型には静的な環境における予測可能性があることがわかります。

アジャイル型の手法と反復的なモデルを採用することで、チームはタスクの優先順位を効果的に決定し、品質とセキュリティを維持しながら本番環境に迅速に展開できます。このアプローチは、セキュリティを最初から組み込む現代の DevSecOps の手法とよく合致しています。

よくある質問

SDLC に従うことで、組織は多くのメリットを得られます。最終的にはプロジェクトの管理と制御が強化され、開発フェーズの体系的なフレームワークがもたらされ、チームメンバー間のより適切なコミュニケーションとコラボレーションにつながります。SDLC はプロセスを合理化し、開発コストの削減と市場投入までの時間の短縮に寄与します。このアプローチでは、欠陥の少ない高品質のソフトウェアが生み出され、製品の信頼性が全体的に向上します。
 

包括的なセキュリティを確保するためには、API セキュリティを SDLC の手法にシームレスに組み込むことを検討する必要があります。SDLC の体系的な手法を活用してソフトウェア開発を最適化することで、効率性と品質を確保し、プロジェクトの開始から展開まで成功を収めることができます。

プロジェクトに適した SDLC モデルを選択するためには、ウォーターフォール型、アジャイル型、リーン型、反復型、スパイラル型、V 字型などのさまざまな手法を評価する必要があります。次に、プロジェクト要件、タイムライン、チームのダイナミクスを評価します。
 

例えば、ウォーターフォール型は、要件の変動がない、明確に定義されたプロジェクトに最適です。これに対し、アジャイル型は反復的な開発を必要とする動的な環境に適しています。リーン型は効率性と無駄の排除に重点を置き、反復型は柔軟性を確保し、スパイラル型はリスクを管理し、V 字型は徹底的なテストを重視します。SDLC モデルを比較する際には、プロジェクトの性質、規模、適応性を考慮し、ソフトウェア配信を成功させるために開発目標やチームのダイナミクスとの整合性を確保することが重要です。

セキュリティをソフトウェア開発ライフサイクルに組み込むことは不可欠です。DevSecOps の手法を使用すると、セキュリティが SDLC の各フェーズの必須要素となります。自動化されたセキュリティテストと継続的な脅威監視を採用し、開発の初期段階で脆弱性を検知することが重要です。

SDLC を効果的に実行するためには、いくつかのベストプラクティスに従う必要があります。綿密な計画を策定し、開発を成功させるための準備を整えます。明確な要件の収集から始め、強固な土台を確保します。反復的な開発によって最終製品のセキュリティを確保し、ライフサイクル全体を通じた継続的なテストによってソフトウェアの品質を向上させます。問題に迅速に対処し、チーム間のコラボレーションを促進することで、よくある落とし穴を回避します。 
 

包括的なアプローチを実現するために、API セキュリティを SDLC に組み込んで DevSecOps の手法を取り入れ、安全な開発環境を確保します。開発プロセスを最適化して高品質のソフトウェアを提供するためには、これらのベストプラクティスを取り入れ、適切に体系化された適応性のある SDLC を目指す必要があります。

Akamai が選ばれる理由

Akamai は、オンラインビジネスの力となり、守るサイバーセキュリティおよびクラウドコンピューティング企業です。市場をリードするセキュリティソリューション、優れた脅威インテリジェンス、そして世界中の運用チームが、あらゆるところで企業のデータとアプリケーションを多層防御で守ります。Akamai のフルスタック・クラウド・コンピューティング・ソリューションは、世界で最も分散されたプラットフォーム上で、パフォーマンスと手頃な価格を両立します。安心してビジネスを展開できる業界トップクラスの信頼性、スケール、専門知識の提供により、Akamai はグローバル企業の信頼を獲得しています。

関連ブログ記事

クラウドコンピューティングにおける AI:AI の普及で大きく変わるビジネス環境
クラウドコンピューティングにおける AI の普及により、さまざまな業界で変革が起きようとしています。この記事では、クラウド AI とエッジ AI の違いに加え、それぞれの長所やユースケース、ソリューションについて説明します。
クラウド移行戦略:ステップバイステップのフレームワークとメリット
お客様のビジネスに最適なクラウド移行戦略を見つけてください。クラウド移行のさまざまな手法とメリットについてご説明します。
分散型 AI 推論 — 次世代のコンピューティング
分散型推論は、AI の活用方法を再考するものです。Akamai が高パフォーマンスで高いコスト効率の AI 推論の需要にどのように対応しているかをご覧ください。