株式会社ベネッセホールディングス

人気のデジタル教材の配信開始時に積年の問題が顕在化
Technical Advisory Serviceの支援でCDNの最適化に成功

高い技術力とノウハウを持つ Akamai TASのプロフェッショナルは、私たちがCDNの本来のパワーを十分活かせるようきめ細かい設定の提案やコストの最適化に向けて尽力してくれました。トラブルなく教材を配信できるようになったのは、アカマイの親身なサポートのおかげです

株式会社ベネッセホールディングス インフラ・テクノロジー推進部 部長 植田 省司 氏

DXを推進し、ライフステージをトータルサポート

ベネッセグループは、1955年に設立された福武書店をルーツとし、2009年に持株会社の株式会社ベネッセホールディングス(以下、「ベネッセホールディングス」)を設立した。乳幼児の育成をサポートする「グローバルこどもちゃれんじ」や小中高校生むけの「進研ゼミ」などの通信教育でよく知られるほか、妊娠・出産・育児をカバーする子育て情報誌「たまごクラブ」「ひよこクラブ」、ペット情報誌「いぬのきもち」「ねこのきもち」、生活情報誌「サンキュ!」などの出版事業も人気だ。

 このほか同グループは、高齢者向け住宅の運営や在宅介護・通所介護サービス、配食サービス、保育園・学童施設の運営といった介護・保育事業にも注力し、また近年は米Udemyと提携して法人向けオンライン研修サービス「Udemy for Business」を提供するなど、社会人向けのリカレント教育も展開している。主軸の教育事業だけでなく、私たちのライフステージ全般にわたって多様なサービスを提供しているのだ。

 さらに同グループでは、DXにも積極的に取り組んでいる。例えば進研ゼミの各講座では、タブレットデバイスとインターネットを活用した「チャレンジタッチ」が好評で、会員数も年々増加している。

 「私たちは多様な事業を展開しており、それぞれ特長が異なるために、ITのニーズもバラバラです。そこでグループの統合ITインフラを厳選しつつ、各事業が最適なITを展開して自営できるように努めています。また各々のDXを加速するため、内製化やエンジニア人材の強化にも取り組んでいます」と、ベネッセホールディングス インフラ・テクノロジー推進部 部長の植田省司氏は述べている。

新年度の教材コンテンツ配信で問題が顕在化

ベネッセでは、早くからWebを活用した情報発信に取り組んでおり、またユーザーが多いことから、2010年ごろにはすでにアカマイのCDNサービスを活用してトラフィック配信の効率化に努めていた。しかし、各サービスの会員数が急速に伸び、サービスの中核がネットを使った形態へシフトするにつれて、いつの間にか当初のCDNの導入効果が十分に発揮できなくなっていった。

 その積年の問題が顕在化したのがチャレンジタッチだ。各講座では、月次で更新コンテンツを配信しているが、特に毎年3月には次年度の教材コンテンツの配信があり、多数の会員が一斉にダウンロードを試みるため、膨大なピークトラフィックを処理しなければならない。ところが2019年、ついにアクセスの集中でコンテンツをダウンロードできない状態となってしまった。

 「コンテンツの自動更新の時間をズラすなどの対策は講じていましたが、多くの保護者は、お子さまが楽しみに待っている教材をいち早く入手しようと、配信開始の時間に合わせて更新されたコンテンツのダウンロードを試みます。しかしアクセスの集中でタイムリーなダウンロードができず、SNSなどを通じて多くのお叱りのことばをいただきました。一年かけて教材を製作してきた社内スタッフにも迷惑をかけました。CDNを利用しているはずなのに、なぜこのような事態になっていたのか、はじめは理解できませんでした」(植田氏)

 植田氏は問題を分析し、CDNサービスを使いこなせていないことが原因だと考えた。アカマイのサービスを導入した当初は、トラフィックもデジタル化されたコンテンツも現在ほど多くなかったためか、標準的なCDNの設定でも十分に機能していたのだろう。しかし、現在、更新されるコンテンツのサイズは最大で合計1.6GB、チャレンジタッチの端末数は約80万台に及んでいる。その大規模化した同時ダウンロードのリクエストに応えるための様々なCDNの機能の理解や、活用のノウハウが不足していた。

アカマイのプロフェッショナルと大幅な改善・強化に取り組む

CDN本来のポテンシャルを活かしきれていないのでは、と考えた植田氏は、現状の課題の整理と解決策を探るため、「Technical Advisory Service(TAS)」を利用して、専門家の目線からアドバイスを受けることにした。TASは、製品に精通し経験豊富なアカマイの専任 Technical Advisor から、高度な技術コンサルティングとアドバイスを受けるためのサービスだ。

TASのプロフェッショナルから、コンテンツ配信やコストの最適化のために設定を施すべき個所がいくつもあると指摘を受け、設定の修正を繰り返して、問題を解決していった。

 「ベネッセでは多くの事業部門がコンテンツのアップロードを担当していますが、彼らはそれを配信する CDN の担当者ではないので、これまで小さな問題が起きても、原因を究明できない状態のまま、"感覚的に" CDNを使っていたことが分かりました。例えば、ページのキャッシュが更新されないという問題に遭遇していましたが、担当者は、たまに変な挙動が起きることがある、としか考えていませんでした。実は単にキャッシュの有効期限が長く設定されていただけだったのです。そこで、アカマイは、我が社の事業部門向けに特別セミナーを開き、CDNを活用するための知恵を各部門の担当者に伝授してくれました。基礎から高度な設定まで、わからないことを親身になって丁寧に回答してくれたため、徐々にノウハウを蓄積していくことができました」(植田氏)

 さらに、最も重要な次年度教材を配信する2020年3月に備えてベネッセは「Akamai イベントサポート」サービスを契約し、入念な準備に取りかかった。これは、アクセス集中が予想される大規模なスポーツイベントやゲームの配信にも利用されている特別支援サービスだ。膨大なトラフィックを模したテストを事前に実施することはできないため、Akamai TASは植田氏と協議しながら入念な事前アセスメントと設定を施し、万全の体制を整えることに集中した。またトラブルに備えてモニタリング設備を用意して配信の日を迎えた。

 「トラブルはいっさい発生しませんでした。膨大なダウンロードリクエストをさばき切り、スムーズにコンテンツを配信できたのです」と植田氏は振り返る。同氏はこの結果を、“アカマイによる入念な準備の賜(たまもの)”と高く評価する。「アカマイとチャネルパートナーの日本のスタッフ陣の技術力は非常に高く、高度な課題でも日本の技術チームだけで速やかに解決してくれます。人を近くに感じられるサービスが手厚く、私たちの組織や事業をしっかりと理解してサポートしてくれました。信頼できるチームとサービスです」

 その後も、在宅デジタル教材の学習効果が広く浸透するにつれて、トラフィックは増加を続けている。2022年度教材の更新でも無事配信の波を乗り切ったが、ベネッセでは、TASを活用して、さらなる対応策の協議をAkamai と続けている。

CDNを正しく理解し、手間をかけて環境変化に合わせることが重要

植田氏は、Akamai CDNが技術の塊だと理解することが重要だと述べる。いま、ベネッセは運用ノウハウを蓄積しつつあり、CDNを使いこなすことで、コストや配信の最適化を図れるようになってきたという。

 「アカマイは、CDNの技術やサービスについて多数のホワイトペーパーを公開しています。まずはこれらのドキュメントを熟読し、仕組みを理解することをオススメします。職場やシステムの変化にあわせて手間を惜しまずに愛情を掛ければ、CDNが本来の効果を発揮してくれるということを実感しています」(植田氏)

 ベネッセホールディングスの次の目標は、グループ内のIT環境で、クラウドの活用をさらに進めることだ。そのためには、アカマイのWebやネットワークセキュリティなどのサービスの活用が欠かせないと考えている。同社では、今後もデジタル技術を積極的に採り入れていくことで、質の高い学習体験や私たちの生活を全力でサポートしてくれるに違いない。


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